夏の終わりと、母との別れ その8

崩れ落ちる患部に、全身に巣食った末期癌。


これだけでも十分に悪い知らせでしたが…

お医者様の話はまだ続きました。


母の倒れた直接の原因は、胆嚢の炎症では無くて。

頭蓋に転移した癌細胞のせいで、脳出血を起こしたことだったそうです。


末期がんに、脳出血!

もう良い知らせなんて、どこにもありません。


そして…とどめの言葉が。

「余命は1週間だと思ってください」でした…。



人生で、こんなことが起こるなんて。

ドラマや小説の世界じゃなくて、自分がこういうことを言われているなんて…


とにかく、衝撃のあまり。

悲しいとか、泣けるとか、そんなことよりも驚きが勝っていました…。



だって乳がんなんて25年も前のことで…

とっくに治ったと思っていて…


座骨神経痛だってずっと聞かされて、行くのは病院ではなく治療院だけで…。

それが頭蓋の方まで転移して出血を起こして、骨のあちこちを侵食して、

肝臓は良い部分が見当たらないてくらいマダラになって。

呆然とするしかないですよね…。


腐りかける患部の痛みに、内部からの癌の痛みに。

どうやって耐えていたのかと…信じられない。


そんな気持ちで、いっぱいでした。



衝撃が落ち着いた後に来たのは、怒りに似た感情だった気がします。


ほんっとうに本当に、昔から母って病気のことに関しては秘密主義でして。

祖父母の時や、25年前の乳がんの時も…子供には詳しい話をしない人でね。

今回の件も、いかにも母のしそうなことだったので…


「もう!ほんと変わってない!ひどい!

 お母さんの頑なさに怒るしかできんよ…ひどい…

 なんで教えてくれんかったん…」


そんな風に、怒りと悲しみがないまぜになったような気持ちで。



うっすらと怒りに似た感情を抱えつつも。


「責めたいけど、責められない。

 痛い思いをしたのも、苦しい思いをしたのも母だから。

 母が自分で決めて、そうした事だから。

 でも納得できない、理解したくない…。」


とも思っていて。



きっとこの時は。

悲しいって思ったら、母の死を認めるような気がどこかでしていたんでしょうね…。

悲しいとか泣きたいとか、そういった感情はフリーズしていた気がします。

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