夏の終わりと、母との別れ その9

さて、ここで母の手帳の話をします。


母が倒れた時、枕元に手帳がありまして…

そこには葬儀の段取りや、知らせる友達リストが書いてあり。

父はそれを見て「ただ事ではない」と悟って、救急車を呼んだそうです。


病院では、亡くなる間までの1週間。

毎日24時間、家族の誰かが側についていたんですが…

モルヒネを打って意識のない眠る母の側で、その手帳を見せてもらいました。



最初に父からこの話に聞いたときは。

母は自分の病気について知っており、前もって準備していたのか…と思いましたが。


書き残した手帳を見ると…

普段の母の筆跡とは全く異なる、幼児の書いたような乱れた文字で。

本当に必要最低限のことしか、書き残されていなくて。


母の性格からするとですね、何か月も前にわかっていたなら。

ある程度時間があったなら、もっと事細かにあれこれ書き残しそうなものなんです。


なのに葬式にまつわる事と父への感謝、あとは担当医に向けた簡単なメッセージ。

書いてあるのは、それくらいのもので。

元気な頃に「作っておかんとね」と笑っていた、遺書もなくて。


知ってから時間はあったけど、心の整理がつかなかったのか。

それとも倒れる直前まで、そうではないと信じようとしていたのか。


どちらにしろ、脳出血で倒れた後は…

半身麻痺もあり意識も朦朧としていて、まともに話せることは1度もなくて。。


わたしたち家族には、もう何も知る術はありませんでした。

ただ手帳にはこういう事も書き残されていました。

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