夏の終わりと、母との別れ その15
お医者様の「聞こえないだろう」という言葉に反するような仕草を見せた母。
その後、夕方に夫が帰る挨拶した時も…
それまで反応なかったのに、一瞬軽く手を握り返してきたりして。
「耳は最期まで聞こえているから、たくさん話しかけてあげて」
という言葉を、色々な方から伝えていただきましたが…
本当にそうかもしれない、とこの日の母の反応を見ていて思いました。
なので出来るだけ母を安心させるような言葉や、感謝の言葉などを
ハッキリした穏やかな声音で伝えるようにと心がけていたんですが…
一緒に暮らしていた父や弟は、かなり動転してしまっていたようで。
父は母のいるところで、葬式の段取りの話を始めてしまったり。
弟は「大丈夫?しんどくない?」と、あからさまにおろおろしたような声音で。
いや!だからね!
耳しか聞こえんなら、もっと安心させるなり感謝の言葉を伝えるなり…言うことあるじゃろ!?
とわたしが突っ込みたくなったのは。
実家を出て15年も経ち、離れていた期間が長いので2人よりも落ち着いていたせいでしょうか…?
そもそも返事ができない状態で、質問されても…困りますよね?
自分の経験上、しんどい時に「大丈夫?しんどくない?」って聞かれても
「大丈夫じゃない。しんどい。」しか言えないし。
それよりも
「大丈夫よ。ゆっくり息して、大丈夫。吐いて~吸って~」
「看護士さん呼んどるけんね、大丈夫すぐ来るよ」
などの返事のいらない、安心させるような言葉の方がいいかなと…
これまでの人生、わりとよく体調を崩してきて。
救急車に乗ったり、入院したり、車椅子やストレッチャーで運ばれたり。
「大丈夫じゃない」の一言を発することすら、しんどい。
身体が弱ると、気も弱る…そんな経験を通しての、わたしの単なる想像ですが。
ちなみに、わたしが母とコミュニケーションを取れたと感じたのはこの日が最後でした。
1番心配であろう、弟と父について「2人は大丈夫よ、安心してね!」という内容を伝えたら
この日、1番ハッキリとした音で「うん」と返ってきて…。
あ、これは心残りの1つだったんだろうなって。
そんな風に感じたのを覚えています。
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