夏の終わりと、母との別れ その16

倒れて4日目には、呼吸が止まるようになりました。


1時間に5~6回くらい、モニターの波形が平坦になり…

そのまましばらく呼吸が止まり、また戻ってくると言うことを繰り返します。


最初は焦ってナースコールを鳴らしたり、必死で声をかけていましたが。

あまりにも頻繁にあるので、わたしはすっかり慣れてしまい。

その度に焦ることもなくなって。


「大丈夫よ、落ち着いて。ゆっくり、吸って~吐いて~ゆっくりね。」

と、息が戻るまで声をかけるようにしていました。



で、父と弟と交代で母を看ていたんですが…

一緒に住んでいたぶん、苦しそうな姿を見ると耐えきれなかったんでしょう。


弟のかける声は、焦っていたり心配そうな調子がその端々に出ていて。


その不安そうな声に、母が心配したのでしょう。

動かない腕の力を振り絞って、何度も弟の手を握り返そうとしてきたそうです。


母の反応がダイレクトにあったのは、この時が最期だったでしょうか。


もう夜だったので交代で寝ていたわたしが、その反応に動揺した弟に起こされて

「弟は休ませるけん、大丈夫よ。安心していいんよ、心配いらんよ。」

と声をかけると、傍目にも手の力が抜けて落ち着いて。


それからは興奮したり、何かを伝えようとしてくることはありませんでした。

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